プロフィール

Author:らさき
小説の前段階のメモを細切れにのっけています。
一応続いているものには番号をふってあります。
今後形を変えて現れる事もあります。
カテゴリー=小説のタイトルです。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

月別アーカイブ

カテゴリー

ブロとも申請フォーム

FC2カウンター

ブログ内検索

RSSフィード

リンク

By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

巴〜東雲の章

「おまえもトモエっていうのか」
 もう一人の“トモエ”は、ひまわりのように笑う、生気に満ちた女だった。

 女にしてはやや大柄で、気安く足軽たちに混ざって練兵に参加する様からは、実は“姫”であることはうかがい知れない。
 だが中原の豪族、兼遠の一人娘。れっきとした姫である。
 それでいて、そこらの男より断然いい動きをするのが巴という女だ。
 そういう女だから、同じ年の女より女としての自覚が薄い。
 だから兄者たちに混ざってこんなところまで来てしまう。
 こんなところ―――遊廓である。
 座敷での宴もたけなわで、この後は個室に・・・といきたいところだろうに、兄者たちは妹を置いていくこともできずに困惑顔である。
 部下たちも同行している手前、ここで帰るのも面子にかかわる。
 だが誰かがその役目を負わなければならない。では誰が・・・と互いをチラリチラリとうかがい合っている。
 ここに至るまでに押し留めるなり、まいてくるなりすればよかっただろうに・・・おそらく彼女は兄者たちの上をいったということか。
 そんな様が手に取るようにわかって、兄者たちに同情して声をかけたのだ。

天使種

 出発のその朝、

 シイガは長かった髪をバッサリ切った。

 決別のつもりで。

 自分で適当に切ったのでザンバラだが、それはそれで新しい自分に似合いだろうと。

 優等生の高等天使は今日でおしまいだ。

 今日からは力天使のシーガ。

 

 そしてその日、

 髪を染めた。

 天使では絶対にあり得ない色に。

 エデンと永遠に決別するために。

 決別?――違う、

 解放だ。

 髪を切る――

 法衣を脱ぐ――

 髪を染める――

 羽根を失う――

 高位も、力も、天使であることさえ・・・

 失うたびに得るのは喪失感より解放感だった。

 気枯れない羽根はエデンに縛られないことを意味するにもかかわらず、誰より縛られて不自由だった。

 エデンを出ることができてもまだ。

 羽根を失って、相棒も半身も全て失って、今。

 ようやく自由になったと感じる。

 胸の中を風が吹いていく。

 自由だ。

 何にも縛られない、本当の自由。

 ああ、だけど、

 大事なもの全てを失ってこんな風に思うなんて、

 失ってしか自由になれないなんて、

 なんて自分はさみしい生き物なんだろう。

白×黒

 

「別に俺は“恋人”じゃなくてもいいんだけど」

 隣にいられるポジションなら、呼び名はどうでもいい。

 ただ他に、ちょうどいい呼び方がないのも確かだ。

 親友というほど美しくもない、相棒というほど信頼してない、半身というほど重大でもない。

 かといって恋人というほど甘い関係ではまったくない。

 大切にしたいわけではないけどそこそこ大事で、べったりしたいわけじゃないけど失えない。

「俺にとっては体の関係は重要じゃないんだけど・・・」

 相手には事欠かないであろう白金のルックスとスタイル。

 そもそも他人に執着を持たない白金には、セックスは遊びでしなかない。

「でもクロにとっては重要・・・っていうか、接触を許すことに意味があるって知ってるから・・・」

 意味ありげに一度言葉を切ってから、低くささやく。

「すげー燃える」

「やらしい言い方すんなッ」

「やらしいことしてんだから言い方だけキヨラカにしても意味ないと思うけど」

「つーか!言う必要ねェだろ、そもそも!」

「言わなくたってすでに恋人だって思われてんだから、絶対現実よりやらしい想像されてるぜ?」

 指摘だけですでに憤死しそうな顔で言葉に詰まる黒羽をさして

「な、話だけでこんなだぜ?それがどこまで許してくれんのかとか受け入れてもらえてるのかとかの実感が目に見えてわかるとさ。俺だけにとか思うともう、たまんないだろ」

 確かにわかる気がする。

「そしたらもう他の体なんていらないし」

 白金はもともとが体のぬくもりと鼓動を求めての行動なので、男女の区別をしない。

 それが“遊び”と結び付いてしまうので、節操がないと言われるゆえんなのだが。

 自分だけの、独占できる体があるなら相手は一人で十分。

 さらにそれが自分にしか許されないというなら、それ以上に理想とのものはない。

 黒羽の隣、というポジションの話の根拠と、ぬくもりを求める行動の原点は本来はまったく別なのだ。

 たまたま二つが一人でまかなえたために、結果として恋人という呼び名が一番近い関係におさまっているというわけだ。

白×黒

「ユキ兄さん、俺はひとつ発見をしたのですが」

 画面越しに家主かつ保護者に改まって報告する白金。

 らしくもない口調にもユキは毛ほども動揺せず、それで、と先を促す。

「クロは甘いものが好きなようです」

「あ、そう」

 感心するわけでもなく、呆れるわけでもなく、ただ無感動に受ける。

 一人で行動できるところまで育っている人間を養育する義務はないと信じているユキは、黒羽に対して住居以外を保証してやる気もない。ゆえに食の嗜好を報告される意味がまったくわからない。

「わざわざ私を呼び出して言うほどの発見だった?」

 冷たい反応といえばその通りだが、白金は彼の反応に慣れていたので気にせず続ける。

「なんの因果関係があるかっていうと、つまりこれから差し入れに甘いものが増えるけど、ユキは甘いもの好き?って話」

 いつもの呼び捨てスタイルのくだけた調子に戻り、簡潔にまとめる。そういうことなら納得できた。

 このマンションを訪ねる時は必ずなにかしら持って現れる白金は、攻略目的が黒羽であっても家主への配慮も忘れない。

 将を射んとすればまず、ということかもしれないが、義理堅いところがある。

 詮索したことがないので確信はないが、おそらく育ちがいいのだと思う。

「エネルギーと脳への糖分補給という程度には摂取するけど、嗜好としては黒羽ほどは好まないな」

「わかった、甘さ控えめで。あー、でもユキの体質わかんないからカロリーも控えようかなー。ユキが太ったら困るし」

「なぜおまえが困る?」

「困らないか。でもユキのしゅっとしたフォルムが好きだから、それが崩れたらガッカリするじゃん」

「留意しよう」

「してして」

 じゃ、用件はそれだけ、と白金が手を振る。

 通信終了の・・・さよならの合図だ。

 この手を振る文化は今までのユキの人生はなかった。

 白金が頻繁に顔を出すようになったことで、黒羽の生活は大きく変化したようだが、ユキの生活も少しずつ変化している。

「ああ」

 手を振りかえしてから通信を切る。

 画像を送る通信も、以前は必要を感じなかったものだ。

 白金のわがままを受け入れる形で成立したスタイルだったが、同じ「直接会わない」スタイルでも、まっとうな表向きの仕事の依頼は前より増えた。

 正常な人間関係は対面でしか成立しないということか・・・ひとつ学習したことだった。

白×黒

「そうか、ユキに育てられると、こういうダサイお子が育つわけだね」

 ユキは人間に興味のない、むしろ嫌いな男だ。世話を請け負ったというだけでも奇跡、というレベルだ。

 対象がある程度大きく育ってからだったのが幸いで、自力で生活する知恵も多少ついていたために生き延びている。

 が、ゆえにその子どもは服装などテキトーだ。

 通販ですませたいがために色もサイズもテキトーで、あとは安いという一点で選んだ服を着ている。

 髪も伸ばしっぱなし。

「何年着てんだこの服」

 洗濯しすぎて襟ぐりの伸びた、色もハゲきったTシャツ・・・耐えられない。

 自分のお古を着せようかとも考えたが、サイズも趣味も違いすぎて、己の美意識が許容できるレベルの仕上がりになると思えず却下した。

「よっしゃ、クロ、買い物行こうぜ」

「はあ?行くなら一人で行けよ」

 今までだって買い物は白金が一人で行っていたのだからわざわざ一緒に行く必要はないという主張は通らなかった。

「おまえの服を買うのにおまえが行かない理由はない」

 服なんか頼んでない、というのも断る理由にはならなかった。

「いらないと言うなら明日から全裸で過ごせ」

「なんで?!」

「なぜならおまえのダッセェ服はパンツの一枚に至るまで全部捨てたからだッ」

「バカだろオマエ?!」

 慌ててクローゼットを見に行ったが、後の祭り。

 本当にすべて空だった。

 なんだこの言い知れない敗北感。

「大丈夫、すべてこの白金様に任せなさい」

 

 任せた結果、1日がかりで下着屋から靴屋まで回らされた。

 服屋など何軒回ったか覚えていない。

 人に会うことが苦手な黒羽は、店員に話しかけられるのはもちろん、人混みや、道で人とすれ違うことにさえもビクつく有り様だ。

 それも終いにはどうにでもなれという気になる。

 自分がどれほど挙動不審であろうとも白金はお構いなしだし、さっさとフォローしてしまうので気が楽になったということもある。

 黒羽一人なら回れ右してしまう気後れする店にも、白金は躊躇なく入っていくし、引っ張りこむ。

「さて、この辺でクロ、これ一式着てみよう」

 試着室で一式ごっそり、それこそパンツまで渡されてクラリとする。

「なんでパンツまで!?」

「旧制とはここですべて決別して、新しい自分を生きるためです」

 真面目くさった言い回しをするが、要は白金が気に入らない“ダサイ服”はすべて処分したい、というそれだけだ。

「店の了解は得てるから、気がねなくさっさと着替えなさい」

 もはや抵抗する気力も失せて、言われるままに着替える。

 脱いだ服は右から左へ、即ゴミ箱行きだ。

 長年着古した愛着もそれなりに感じたが、そもそも着るものへのこだわりも執着もないので、感慨も一瞬だった。

 それになんだかいろいろ諦めた。

 着るものへのこだわりと言えるようなものは、強いて言えば肌の露出を避けたいくらいで・・・それも特に注文したわけでもないのにクリアされている。今はそう寒い季節でもないのに、だ。

 ということは、お見通しってことかよ、となんだかしゃくにさわる。

 そんなこんなで、いっそうむくれた顔で試着室から出てきた黒羽たが、白金はまったくお構いなしでさっさと会計を済ませて店員と話を弾ませている。

 融通の効くほど馴染みの店なのだろうが、こういう社交性は無駄に高いたと感心する。

 オマエだって他人になんてたいして興味もないくせに・・・と思うのはヒガミだ。

 自分の社交性が低いのは完全に自分の責任なので、八つ当たりともいう。

「似合ってるねえ〜、さすが俺。なかなかのセンスだと思わない?」

「オレは一円たりとも払わねェからな!」

「もちろん、支払いは当然俺持ちだよ。俺の趣味だし」

 意趣返しを狙うも、軽く流される。

「ちなみに、他のどの店で買ったどれと合わせても決まるという絶妙なチョイスだから!う〜ん、俺ってスタイリストの才能もあるのか。多才で困るね」

「言ってろ」

| ホーム |


 BLOG TOP  » NEXT PAGE